Tuesday, January 20, 2015

 「十二個の幸運のブドウ」

          

 「スペインではお正月を祝うためにブドウを食べます」

私がこのようなことを言ったら、相手は驚いた表情を見せ、「不思議な行事だね」、と言う。幼い頃からお正月にブドウを食べることを習慣にしている私にとって、スペインの行事に何の違和感がない。しかし、異なった視点から見れば、習慣としてわざわざブドウを食べることが正月のイメージに合わないのは確かである。


  この「不思議な行事」には、正式に「ラス・ドセ・ウバス・デラ・スェルテ」という名前があり、日本語で表すと「十二個の幸運のブドウ」にあたるであろう。スペインにこの行事が定着した理由として、1895年がブドウの生り年であったことを挙げられる。十二月に、スペイン南東部にあるアリカンテというブドウの生産が盛んな都市で、ぶどうが豊作であった。その大量のブドウが素早く消費されるため、アリカンテのブドウ生産組合が正月の行事を提案し、促進した。

         

  しかし、「情熱の国」と言われるスペインでは、正月にただブドウを食べるわけにはいかない。そこで、注目したいのは、そのブドウの独特な食べ方である。大晦日の夜に、大勢の人がブドウ十二個を用意し、鐘楼のある数々の広場で集合する。(今時、とりわけ大都市における大晦日の広場が寒であるはもちろん、大混雑であることも、真夜中に広場に集合することも不愉快である。よって、現在暖かい家でテレビの生放送を観る人がほとんどである。)そして、新年になる12秒前に、ブドウ12個を食べ始める。なぜブドウが「十二個」という非常に特定な数字であるかというと、一年に十二月があるからである。鐘の「ドーン」は「ブドウ一個」にあたり、鐘の鳴り響く音に合わせ、毎月幸運に恵まれますようにと願いながら、ブドウ12個を一個ずつ口に入れる。さらに、ブドウが甘かったら、その月にいいことがある、酸っぱかったら、その月に悪いことがある、というようにブドウの味が新年の運勢を占っていくという。まさに、「十二個の幸運のブドウ」は占いの一種だと言えよう。

          

  このように、十九世紀から今日に至るまで「十二個のブドウ」は続いているわけであるが、最初のきっかけは現在のバレンタインやハロウィンといった年中行事並にたんなる販売促進にすぎなかったといってもよいであろう。

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